(2010)
周りが驚くほどの熱意がまず才能。人はそのパワーに圧倒されるのだな、と思った。
全身と動作を売っている女たちのプライド。歌一本でのし上がる女の強さを前にすると、口パクと踊りに徹した彼女達の舞台とは異なるし、それらが経営不審だった中の再興の切り札となるのでは、文化の否定ではないのか、とは思った。
しかしストーリーでは周りもそれを祝福し、味方の一員と認め、顧客も彼女の歌なら値段を上げても聴きにくる。
「必死に練習するから、お願い、どうか私にチャンスをちょうだい!
失望させないわ!舞台に立たせて!」
「絶対に後悔させないわ」
期待値もだが、何よりうるさく頼んでくる姿勢と情熱、喜びを隠さないキュートな姿。私はクリスティーナ・アギレラを知らないので彼女のキャラクター性には無知なのを白状した上で本作の鑑賞の印象のみで語る。
まず本作は主演のクリスティーナ・アギレラの圧巻の歌唱、必ずこれが一文目にくるだろう。
良くも悪くも彼女の独り舞台と、それを取り巻くショー・ビジネスという主題、それを成り立たせて重層化させるための要素はあったが、それほどうまく機能していない。
本物の才能がショー・ビジネスには必要であり、逆に言えば彼女の登場で経営不振から立ち直る「バーレスク・ラウンジ」はそのままその文化の衰退と敗北を意味している。
例えば多分本来のその文化はストリップも含めたショーであると思うのだが、本作ではそれを入場段階から否定していて、あくまでファッションとしてのルッキズムや世界観としてのハイクラスなジェンダーを売りにしている。けれどもそれだけでは立ち行かないからと、才能の彼女を手に入れることで再興の兆しを見せる。
性産業とショー・ビジネスの区分は曖昧で不可能であるものの、その文化商業であったものに圧巻の才能を投入して盛り上げる、という再現性の無さはむしろ、現代におけるその文化の希望を根こそぎ奪っていく実力の見せつけだろうし、結構過酷なことを突き付けている。
そしてそんな才能の世界であろうとも、ビジネス的な知識や経験がなければ経営も続けられないし、ステージも奪われかねない、という示唆も含めているという側面は良く出来ていて、その面を演じる役割の経営者テス(シェール)が弱い。本作は結局アギレラの映画になってしまっていて、テーマ性によるところに必要であるはずのシェールの側面が弱い。創作的にはそこに脆弱性がある。
好評らしいシェールの独唱の場面も個人的にはあまり評価できなくて、それまでアギレラ一本の物語を見せつけていた所にとってつけたような経営不振の話に戻し、急にシェールの独唱をされても、撮り方と見せ方がうまくないかなという印象。
往年のスターであるその才能も今や経営側に回ったが決してうまくいっておらず、後進を育てていかに経営側の手腕を目指すのか、あるいはそれと才能と実力が異なるという側面の補強が出来るのか。このあたりを彼女の側で描けていないから、その孤独や挫折の側面とその独唱が弱いし、テーマ的にもそこまで実態を伴って活きていない、というのが私の見解で非常に勿体無いと感じた。幾らでも深く出来た作品とテーマに思う。
本作はミュージカル映画に属すると思うのだが、似たタイプの作品としてライザ・ミネリの「キャバレー」とキャサリン=ゼタ・ジョーンズの「シカゴ」が挙げられるそうだ。
基本的にこうしたショービジネスは、下層であればあるほどその実力と舞台と客層と反比例するように性産業の側面はぬぐい切れず、そうしたこともありいくら綺麗に豪華に作っていたとしても、だからこそ個人的に価値や魅力を感じていなかったのだが、逆にそこの世界を才能でぶった切り、経営とビジネス感覚の必要性でドライに描き切った本作は、その意味でイメージを覆してくれたので、その意外性が良かった。しかしそれだけ豊かなテーマ性を鋭く描ける可能性があったために、今の状態は不十分に感じる。
画面作りはとにかく豪華だし、これが通常の映画の値段で見られる、あるいは無料サブスクで見られると思えば、豪華すぎる二時間になることは間違いない。
エンターテイメント的な筋や成功も分かりやすく、美女たちのダンスと歌姫の歌がセットで、華やかなショーに特化していて魅力的。
単なるミュージカル映画というにはパワーを持っていたので、もうワンランク上げられる可能性を持っていただけに個人的には非常に残念だし、脚本でもう少し深みを出すことは充分可能だったので、その意義を追う気はなかったということだろう。
人物造形と配置がうまく、シェールの隣にはもはやゲイの友人代表(スタンリー・トゥッチ)を配置し、「プラダを着た悪魔」から女性の師弟関係を思わせるまではすごくよかった。
アギレラの相手役になるのは、初日メイクをしていたからゲイだと思ってルームシェアを開始するイケメン・バーテンダー(キャム・ギガンデット)で、中盤、可愛らしく幾度も頑張る誘い方は必見だし、こういうアプローチをしてくる男性のその後の溺愛ぶりは折り紙付きのような気もする。
バーレスク(Burlesque)とは、有名な作品を誇張して滑稽に描いたりする文学・演劇上演の脚本・音楽のジャンルで、イタリア語の「Burlesco」冗談・嘲りなどの意味からきているそう。
現在広く知られているバーレスクダンスは、音楽に合わせて女性らしさを強調したり、焦らしながら衣装を脱ぐチラリズムで魅せたりするパフォーマンスで、後期のアメリカ式では下品なコメディーと女性のストリップがほとんどだったそう。
文化的な意味合いは時代にもよりますが、まちまちでしょうね。
明るく、楽しい見どころにあふれた、
非常に華がある、パワフルな作品。
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