(2014)
古い時代とモチーフをここまでポップで愛らしくコミカルに彩ながら、重いテーマも内包し切る絶妙なバランス感覚と均整が取れた創作性は荘厳の一言。どの場面の画面作りも可愛らしく色鮮やかで、その中に生きる古き良き時代の愛らしさと温かさを持って暮らす人物たちへの深い哀悼を持てる幸福。
冒頭現代、国民的作家の墓前で彼の著作を読む女性。
1985年、生前の作家が本作を書いた理由は、あるホテルである話を聞いたからだと説明。
1968年、上の話を国一番の富豪になったミスター・ムスタファから聞く作家の視点
1932年、少年ゼロとブスタヴとの出会いと遺産相続にまつわる冒険。
作中での入れ子は上記の順で登場し、4つの時間軸を持っている。
冒頭は、ある作家の墓の前で彼の著作を読む女性からスタートし、その作家(ジュード・ロウ)が亡くなる前の1985年に語る解説によれば、
「この作品は1986年にズブロフカ国内にあるグランド・ブタペスト・ホテルに滞在中にミスター・ムスタファ(F・マーリー・エイブラハム)から聞いた話だ」とのこと。
その話の舞台は1968年、移民の少年ゼロ(トニー・レヴォロリ)はグランド・ブダペスト・ホテルのロビーボーイをしていて、カリスマ・コンシェルジュのグスタヴ・H(レイフ・ファインズ)に気に入られ、彼に仕事を教わりながら、ある諸問題にまつわる大冒険に巻き込まれる。
どのようにして彼は国一番の富豪となったのか、恩師グスタヴ・Hとの出会いと、このホテルでの出来事について、1932年の出来事を大部分に展開していく。
序盤はところどころ絵本のような画面作りが散見されて、昔のNHKの子供向け人形劇のような可愛らしさ、おとぎ話感があったりして、チープさと懐かしさが思われたりする。均整の取れた世界観と舞台美術は監督の高い美意識と創作性を感じさせる。
事前情報もなく見始めたので、これはアメリカの作品ではないだろうけどいったいどこの作品なんだろう?と考えながら観ていたが、鑑賞後に調べるとドイツとアメリカの合作、製作費は2500万ドル、興行収入1億7480万ドル。
話題の中心になるグスタヴ・Hの人物造形がよく、ホテルに通う顧客の多くが彼のファンであり、ホテル従業員たちも彼の調律により動いているような男で、非常に旺盛かつ人間味に溢れた人物に描かれている。夫人の莫大な遺産相続人に指名される、ホテルに多くの客が集まる栄華もたらす一時代を築き、共に収容された囚人たちも各地のホテルの支配人をも協力させてしまう、何よりゼロが無茶に生涯付き従う、魅力的な人物の説得感がある人物が縦横無尽に駆け巡る。本作はそうした男に見出され、付き従い振り回され続けたベルボーイの少年ゼロの懐古と回想の物語とも言える。
そんな彼と、純粋無垢なロビーボーイのゼロの2人が犯罪者との逃亡劇や追いかけっこを演じる荒唐無稽さ、全編を貫くプロットや画面作りの趣向が、やはりハリウッドのそれとやはり違うので、興味深くも新鮮にも観られる。
メインビジュアルになるホテルはピンク、作中何度も登場する人気の洋菓子屋MENDL’S(メンドル)の箱もピンクに水色のリボン、服装やインテリアの色彩感覚やデザイン等、違和感なく引き締まってはいるが、どう考えても可愛くビジュアル的すぎる世界観と、複数の時間舞台を持った構成と、それにまつわり画面作りに違いがあったり、回想ラストは白黒であったり、意味を全て読み取れないのだが各趣向が凝られており、おしゃれな軽さを堅牢な技術が支えた構成感覚が絶妙な感じがする。
物語の進行上における謎や落着が強い魅力を持つような作品でも、強烈な魅力のヒロインや露骨なメッセージ性があるわけでもないが、均整が取れた荘厳さと時の流れとともに過ごしたホテルと少年の今に感じるなんとも言えない哀愁と、豪華すぎる俳優陣。
アート、ユーモア、シニカル、多彩な要素も均整が取れていてバランス感覚も絶妙だったが、身分証にて取り調べを受けた移民のゼロが暴行された際に放つ怒りに満ちる真剣な「私のロビーボーイから手を離せ!」は愛を感じるし、2度目も恐れることなく反応する彼や彼の最後への経緯にもユーモアやバランスを持たない。反戦や移民問題など幾らでも重く描けるテーマを、古き良き時代の栄華を体現する人物とある建物を中心に据えて、フィクションの美しい構成で包み込んで作り上げた作為性の強い素晴らしく麗しく堅い作品。
豪華な俳優陣とお金もかかっていそうな衣装美術、それを観るだけでも元を取れそうなくらい贅沢な画面作りで展開する、師弟愛を古めかしいフィルムに込めた作りがまた愛おしい。
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