G-40MCWJEVZR 芥川賞で日本文学が読めるのか?①初回は歴代まとめと『コンビニ人間』村田紗耶香と映画化『消滅世界』から最新長編 - おひさまの図書館
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芥川賞で日本文学が読めるのか?①初回は歴代まとめと『コンビニ人間』村田紗耶香と映画化『消滅世界』から最新長編

まとめ

 日本文学の魅力とは何か?
 そもそも、日本文学って存在するのか?
 海外文学好きの私はラテンアメリカ文学、アメリカ文学を読んできて、ふとそんなことを思いました。そもそも文芸の多くを文学と呼称するのも個人的に苦手なのですが。
 日本の真面目な文芸とすると、純文学が浮かび、つまり芥川賞が浮かびますが、それほど有名で地位がある賞のはずが、現実現代におけるその地位の確固や貢献はいかほどなのでしょうか。読書ブログを書いている私ですら全然読めていないのですから、おそらく皆様もあまり読まれていないのではないだろうかと推測します。
 映像技術も発達したし、歌もかっこいいし、鬼滅の刃追う方が楽しいですよね。めちゃわかる。そんな感じで私も虚構創作や商業性の把握として、最近ヒットした漫画やアニメの履修をしているのですが、その一環で芥川賞を捉えて、一応履修しておくか、ってくらいの気持ちです。覆されてほしいけど、現代において文芸だけで勝負する、これがまずハードルが高い。その上で文化としてのそれや体系性も含めて、中心や指標として祀り上げられるのはやはり一応「芥川賞」「直木賞」なのかなと思います。

 芥川賞企画の意義を単独で考えると、
「近現代日本文学の系譜・体系的な読み方」が出来るかもしれないし(著者・著作列)
「世界文学を本質にしてる私が、日本文学(の狭さ・深さ・熱さ)を読む」でもある。
 二つめの方が個人的には本質かなと思います。
 他者意義としても、教養としての芥川賞舐めはありではないでしょうか?
 実際に作品を読むのは大変でも、当図書館にて把握しておく、というのは文化的かなとも。
 中篇以上の小説に与えるという規定によれば長編過ぎる作品はないし、気軽に文芸に親しむ良い機会にもなるのではないでしょうか。その意味でも最近リョサやパワーズやピンチョンの大長編に溢れていた私には新鮮な薄さ。
 その薄さの中に、どれだけの何があるのか、日本文学の真価とは? そもそも日本文学なんてあるのか?なんだそれはいったい?

 純文学好きな読者さんがもしいれば、ぜひ拙い私のジャンル読みに広い心でお付き合いくださいませ。普段の海外作品の話や長さには付いていけないけど、日本人作家の短い作品なら付き合えるかも、という方もぜ一緒に楽しめる読書になりますように。

 初回の今回は『コンビニ人間』で受賞した村田紗耶香と『消滅世界』、
 続く第二回は今村夏子で受賞作『むらさきのスカートの女』とデビュー作『こちらあみ子』ともう一冊負けじと『木になった亜沙』を読みました。ぞくぞく更新予定、毎週水曜更新を目標中🌞

書くべきを持たない日銭数えの節度『むらさきのスカートの女』『こちらあみ子』『木になった亜沙』今村夏子、芥川賞で日本文学が読めるのか?②
「芥川賞で日本文学が読めるのか?」芥川賞企画がスタートしまして、初回は村田紗耶香さんと歴代30年ほど振り返って読みたい作家を抽出した一覧まとめを行いました。 二回目は今村夏子。個人的に『星の子』が結構面白かったので期待していたのですが、今回...

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Contents
  1. 日本文学なんて、
    芥川賞と直木賞だけ読んでおけば大丈夫でしょう……本当?
  2. まずは一覧性、2010年まで歴代振り返り
  3. 村田紗耶香:受賞作『コンビニ人間』
  4. ブログに書いたことある作家さんチーム
  5. 書いてないけど・読んだことがある作家チーム
  6. <新規・読みたい>
  7. とりあえずこんなものか。

日本文学なんて、
芥川賞と直木賞だけ読んでおけば大丈夫でしょう……本当?

 春頃行った「直木賞はその作家のつまらない作品にあげるものなのか?」は、受賞作にがっかりした読書で終わらずに、受賞作家の他の作品も読んでみることで、日本の中間小説に落胆せずにある程度体系的に読書をする、という企画でした。
 発端は窪美澄や辻村深月、他に面白い作品があるのに、「直木賞獲った作品なんだ~」と手に取った方がその作品だけでがっかりして、その作家や読書丸ごとに失望してしまうことを回避してほしい思いからでしたし、私自身が読書を再開させて1年半の間読んできて、やはり海外作品が好きだとの自覚があり、国内文芸に疎いこともあり、一覧性で作者・作品を知る機会になったことも大きかったです。
 受賞作が当たりでも面白かったし受賞作以外に当たりが見つかるのも嬉しかったです。
 ※一度終了し、アメリカ旅行に出掛けてしまいましたが、秋以降また第二弾やれたらなと思っています。

直木賞はその作家のつまらない作品にあげるものなのか?①歴代受賞作を読んでみよう!『ふがいない僕は空を見た』の窪美澄の場合
2025年上半期の芥川賞、直木賞は該当作品無しとして話題になりました。良い決断と話題性だなと。 普段読書をしない人が、芥川賞受賞作だから読もうかな、この作家が直木賞獲ったなら読もうかな、と受賞を理由に読んでみて、何だつまらないし芥川賞作家・...
大勝利受賞作『しろがねの葉』はデビュー作の完全昇華 千早茜①直木賞はつまらない作品にあげるものなのか?
直木賞はその作家のつまらない作品にあげるものなのか?のテーマ企画に、真っ向から反論する2022年の受賞作『しろがねの葉』千早茜。処女作からの作品的昇華、作風的な大成功を目の当たりにして成長性に驚いた。作家はこんなにも良くなる!を目の当たりに...

文学賞企画第二弾、ついに芥川賞

 海外文学が好きな私が、芥川賞系譜で日本文学を読んでいこうというこの企画。
 日本文学といえば純文学や私小説などが重い浮かび、その狭さやうじうじしたイメージや、ポストモダンとは少し違うけれど、形式のための形式に似た、文芸のための文芸のようなたたずまい、その様のある意味での幼さみたいなもの、非社会性や非人類性からの非生産性が得意ではなく、広さや社会性に主題を広げてほしい私の好みとは対照的ですので、どこまで楽しめるのか不安ではあります。

最も売れたポストモダン小説?『競売ナンバー49の叫び』革新の価値が高いアカデミズムと、確信の価値が高い読者評価~ピンチョンとは何だったのか?①
世界文学旅行2地域目として、米国・リチャード・パワーズを続けて2冊読み考えてきて、特にアメリカにおける近現代文学に少し詳しくなれた気がするが、過程の文脈の中で何度も出てきたトマス・ピンチョンを避けて通れなくなってきた。 前回あれほど扱ったピ...

 その上で、下心としては、一定の近現代的な国内文芸の把握から日本文学という個体性の把握をしたいし、そのためには直木賞と芥川賞だけ読んでおけば大丈夫でしょう、という安易な考えと、いややはり本屋大賞まで広げないと近代は難しいか?という不信も湧きつつ、まずは読んでみましょう。

まずは一覧性、2010年まで歴代振り返り

 芥川賞企画もいつから始めるかの焦点は、私が20歳前後.2010年まで遡れば間違いないかなと。
 このあたりの年代の基準は前回の直木賞もそうでしたが、私の読書ブランクや、15年遡ればある程度の作家の評価も確定し著作列も出揃ってきているかなという安易な考え方です。
 あんまり古いものは好みでなく投げ出しそうだし、男性作家も食わず嫌いしてきました。
 私は海外は男性ばかり、国内は女性ばかり読む癖があります。

文学的迷子たちへ
文章を読みたいし、できればそれは夢のようなフィクションだと素敵だ。 一人でも多くの文学的迷子が減り、一冊でも多くの本が読まれ、何より私がその孤独から救われますように。

 以下、既読作品、御存じの作者名はいくつ見つかるでしょうか?
 私の既読は、2020年の宇佐見りん「推し、燃ゆ」、2016年村田紗耶香「コンビニ人間」、2011年円城塔「道化師の蝶」、2010年朝吹真理子「きことわ」。15年でたった4作。受賞作は未読ですが、作家単位で一冊でも読んだことがあるのは、今村夏子、柴咲友香を加えて6作家ということになりますね。
 でも思い出してほしい、私は読書が出来なかったから正社員労働から卒業した!

2024上半期 松永k三蔵「バリ山行」
      朝比奈秋「サンショウウオの四十九日」
  下半期 鈴木結生「ゲーテはすべてを言った」
      安藤ホセ「DTOPIA」
2023上半期 市川沙央「ハンチバック」
  下半期 九段理江「東京都同情塔」
2022上半期 高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」
  下半期 佐藤厚史「荒地の家族」
      井戸田射子「この世の喜び」
2021上半期 李琴峰「彼岸花が咲く島」
      石沢麻衣「貝に続く場所にて」
  下半期 砂川文次「ブラックボックス」
2020上半期 遠野遥 「破局」
      高山羽根子「朱里の馬」
  下半期 宇佐見りん「推し、燃ゆ」
2019上半期 今村夏子「むらさきのスカートの女」
  下半期 古川真人「背高泡立草」
2018上半期 高橋弘希「送り火」
  下半期 町屋良平「1R1分34秒」
      上田岳弘「ニムロッド」
2017上半期 沼田真佑「影裏」
  下半期 石井遊佳「百年泥」
      若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」
2016上半期 村田紗耶香「コンビニ人間」
  下半期 山下澄人「しんせかい」
2015上半期 又吉直樹「火花」
      羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」
  下半期 本谷有希子「異類婚姻譚」
      滝口悠生「死んでいない者」
2014上半期 柴咲友香「春の庭」
  下半期 小野正嗣「九年前の祈り」
2013上半期 藤野可織「爪と目」
  下半期 小山田浩子「穴」
2012上半期 鹿島田真希「冥土めぐり」
  下半期 黒田夏子 「abさんご」
2011上半期 該当作なし
  下半期 田中慎弥「共食い」
      円城塔 「道化師の蝶」
2010下半期 西村賢太「苦役列車」
      朝吹真理子「きことわ」
2010上半期 赤染晃子「乙女の密告」

おそらく本質はそれ以前、
近年15年では量れない芥川賞の貢献

 2010~2025年の15年の間に、絲山秋子がいなくてびっくりしたが、それ以前で遡ると、2009年/磯崎憲一郎、2008/津村喜久子(『水車小屋のネネ』)、2007/川上未映子(『黄色い家』)、2006年/青山七恵、2005/絲山秋子、2005/中村文則(『去年の冬、君と別れ』)、2003/金原ひとみ綿矢りさ(『蛇にピアス』『蹴りたい背中』『ナチュラルボーンチキン』)、2002/吉田修一(『悪人』『国宝』)、1998/平野敬一郎、1994/笙野頼子、1992/多和田洋子、1990/小川洋子(『博士の愛した数式』)、1987/池澤夏樹(河出書房新社『世界文学全集』の編纂)。

 15年以上さかのぼると、だいぶ豪華な感じがする。ここは芥川賞が若手に与えられるものだから、に関連するか。一般的や他業界でも活躍する作家が散見されるので、芥川賞系作家の一般化や文化的貢献は一応感じる。芥川賞と直木賞、純文学とエンタメ小説という日本的なジャンルの区分けが、どのように機能しているのか、そしてそれが日本文化にどのように作用しているのか、という見方をすれば、意外にも芥川賞作家が登竜門を経て文化的・本質的貢献を全くしていない、とは言えない、という見方は出来る。これだけでも今回の企画の一旦の成功。

読み方、ルール、スタート!

 ここからのリストアップめぼしの付け方として、
 ☑ブログに書いたことある作家
 ☑ブログに書いたことないけど読んだことがある作家
 ☑新規・読みたい作家
 等に分類しながら一人ずつ攻めていくことにする。受賞年は無視して、私が読みたい順で読んでいきます。直木賞企画と同様、今回も①受賞作②それ以外~の順で1作家で1.2記事投稿するかなというイメージでいます。4冊も5冊も読みたくなる作家が出てきてその想定を突き崩してほしい気もする。あんなに想定外に長くなった世界文学旅行・アメリカ篇のようなアクシデントなるか……?
 ブログ読者さんで、「この作家さんはどうしても読んでほしいよ~」「この作家さん読んでくれるの楽しみだよ~」というご希望や応援などあればコメントやリプライください。

 読み終わって新記事投稿したなら随時以下も更新していきますので、ブクマしてハブ扱いしてください。長く楽しめそうな企画、スタートです。

村田紗耶香:受賞作『コンビニ人間』

 トップバッターはやはりこの人ですかね、受賞作面白かったですが、今回はそれ以上が見つかるか?というある種邪道なスタートですが、期待値は充分。作品としても記事としても去年トップ3位入りしていて、私のブログ読者さんはなじみがある受賞作ではないでしょうか。面白い作品を芥川賞受賞作として売り出せる幸せ、近年で一二を争う受賞成功例ではないだろうか。
 受賞作は以下で一度読んでいますので、今回は、今年映画公開を控えている2015年の『消滅世界』から。

社会に馴染む私の達成、人間のマニュアル『コンビニ人間』村田沙耶香
近年の芥川賞受賞作の中で、商業的にも本質的にも貢献度が高いイメージが本作にはある。ブログ開設初年度は、私にとって十年ぶりに文芸読書を再開した年になるのだが、その開始直後にすぐに読んだ本作にはそれだけの知名度があるし、影響力もあっただろう。 ...

お母さんたちと子供ちゃんが溢れる街の清潔的な狂気の不足『消滅世界』

 夫婦間の性行為が近親相関としてタブー化され、人工授精が基本となった世界で、千葉を実験都市にした楽園システムが進行中だ。そちらで生育した子供の方が、従来の家族システムで育つ子供よりも不公平なリスクを子どもが負うこともない。恋愛や性行為は婚外に求めるものであり、恋愛の相手も人間よりも二次元の相手の場合も多く、恋愛=性行為ともならない、など家族や性行為に依存しない繁殖システムを展開していく異社会性の中で、考え、変化し、変わらず、愛し、愛さない世界に生きる主人公は、40人の恋人をポーチの中に入れて持ち歩いている。初恋の相手は青い瞳の男の子だった。

 前半の、妊娠と出産、性行為と恋愛性についてなどは、結構内省的かつ、特徴的なコミカルでユニークな設定でオタク要素や二次元恋愛などを自然な世界観として展開するのも魅力的だったので、それらの奥行きがどう帰結するのかは楽しみではあった。
 恋愛感情、性行為の価値の変換、肉体的な恋愛と二次元虚構的な恋愛、男性身体の妊娠、母親や子供の強硬性、等と、多くのテーマを手広く内包使用する意欲作ではあるので、各種の思索の入り口としては豊か。ただ、250頁で昇華するには濃厚なテーマ群であり、一つ一つに注意散漫であり、その一体感としても作り上げの威力も感じられず、中途半端に終わっているかなと。
 後半の、お母さんたちと子供ちゃんの清潔感の狂気についても、両者の要素と展望は面白いが、どちらにせよどちらも筆致が足りておらず、未熟な草稿感がぬぐえない。
 『コンビニ人間』の時点でも若干の近未来感を漂わせていた作者の個性を上手く使った上で、SF要素を明確に自然に使いこなすさまは良かったが、その融合に留まる
 素材も虚構性も効いていた意欲作ではあるが、表現力や完成度としては、切れ、威力の部分でだいぶ残念。11月28日に映画化ということで、この脚本的な雰囲気のあるので、どのような作り上げが為されたのか、は興味を持てるか。

映画『消滅世界』公式サイト
映画『消滅世界』11.28(金)公開 世界で注目される芥川賞作家・村田沙耶香のベストセラー小説を蒔田彩珠主演で初の映画化

著作列を確認

2005年『授乳』短篇集
2008年『マウス』
2008年『ギンイロノウタ』短篇種
2010年『星が吸う水』   短篇集
2011年『ハコブネ』
2012年『タダイマトビラ』
    『しろいろの街の、その骨の体温の』
2014年『殺人出産』   短篇集
2015年『消滅世界』
2016年『コンビニ人間』
2018年『地球星人』
2019年『生命式』    短篇集
2019年『変半身(かわりみ)』
2020年『丸の内魔法少女ミラクリーナ』短篇集
2022年『信仰』     短篇集
2025年『世界99』    上下巻
 こう見ると短篇集が多いし、今回は『コンビニ人間』の前年と10年も前の作品。となると気になるのは、長編かつ最新作となる『世界99』。世界観や主題も今回の消滅世界の進展版という感じ、さらに風呂敷を広げた材料で、どれだけ作り上げられているのかは興味があるが、一気に読むと来年読めなくなるから取っておこうかなという気もする。逆に、落胆したら次読めなくなる、複雑。

 どちらにせよ、先鋭的テーマ、ジェンダー、社会性、主題生は明確で豊か、社会性もあるので狭くまとまる作家性はしていない、かつ独自の世界観を一定以上持っているので、あとは表現力と完成度。『コンビニ人間』はそこが優れていたので、それに受賞させたことは素晴らしかった。

2024年の人気50記事を一挙公開!社会人が読書生活をリスタート
読書ブログ開設から1周年! 設置してある人気ランキングは1年で更新されるので、周年のタイミングで1年間で書いた90記事中、閲覧人気上位50記事を振り返ります。 この記事を読めば私が1年間で触れてきた小説と映画の良いとこ取りができます。  2...
『丸の内魔法少女ミラクリーナ』村田沙耶香
『コンビニ人間』であれだけの完成度とテーマ性を誇った作者の作品の中でも、ひときわ目を引いた本作を図書館の本棚で見つけた時は嬉しくてすぐに手を取った、そのあとで『コンビニ人間』を先に読んで、なんて素晴らしい作品だろう、と感激した私は次に読むの...

今後の予定をリストアップ。

ブログに書いたことある作家さんチーム

宇佐見りん:受賞作『推し、燃ゆ』
+『かか』

 こちらも受賞作をすでに読んでいる宇佐見りんさん。
 歴代3位の年少受賞で話題になったのでご存じの方も多いかも、モチーフもキャッチ―ですしね。
 ブログ記事もあります、関連記事含めて、著者が発達障害モチーフにこだわる理由は何なのか、知人に言わせれば作品性は受賞作よりも豊かだと噂される『かか』読みたいと思っていたのでちょうどよい機会。

若年作家の世界観の狭さの限界と魅力『推し、燃ゆ』宇佐見りん
現代の芥川賞作家の価値とは?  あまりにも拙い文章が続いて、これは外れか、と落胆した。それが  長いこと切っていない足の指にかさついた疲労がひっかかる。外から聞こえるキャッチボールの音がかすかに耳を打つ。音が聞こえるたびに意識が1.5センチ...

今村夏子『むらさきのスカートの女』
既読『星の子』

 こちらは受賞作は未読、既読はブログにも書いた『星の子』のみでしたが、その記事が結構好きなので相乗効果で作品イメージや作家イメージが向上しているので、今回他作品を読むのも楽しみ。
 受賞作『むらさきのスカートの女』とデビュー作の『こちらあみ子』は読みたい。不穏なのは『あひる』か?タイトルに力を入れない印象は微妙。

芥川賞作家が描く閉じた世界の綺麗な家族『星の子』今村夏子
家族と読書の悲しみや可笑しさ、愛おしさやままならなさを強く感じる一作。 過去に書いた記事を読み直すと、筆致も足りないし編集もどうなんだろうと感じることが結構あるが、本項の締め方などは結構好きで、それを引き出すのは間違いなくこの家族でその読書...

小川洋子『妊娠カレンダー』
既読『猫を抱いて象と泳ぐ』『密やかな結晶』『掌に眠る舞台』

 こちらも私のブログ読者さんには説明は不要ですかね。
 過去記事2つ書いてます、一番好きなのはファンタジックな世界観でチェスとこの世界の残酷と希望を描いた『猫を抱いて象と泳ぐ』ですから、今回はそれ以上に好きな作品が見つかると嬉しいモチベーションですが、いやいやそれ以上があったらどれだけの作家なの?というせめぎ合いです。
 今気づいたけ15年前以上前の作家も入るんだ?というかんじですが、まあ私が主催者なので何でもありということで、楽しみです。

 今回は受賞作と、最新作を読みたいと思いましたが、2025年6月20日発売『サイレントシンガー』は著者6年ぶりとなる長篇小説らしく気になるが、図書館待ち224人だったので、とりあえずsnsでもよく見た『耳に棲むもの』からにします。2024年10月10日発売の短編集。近年は短編集やエッセイの刊行が目立つ感じですかね、個人的には歓迎しません。

才能で”書けてしまう作家”の短篇集『掌に眠る舞台』小川洋子
小説家の技術を感じさせる作家に佐藤亜紀が浮かぶとすれば、小説家の才能で浮かぶのは著者だ。  小川洋子の魅力はまずモチーフ選びにあるし、豊かなそれを例えば実写化するよりも素敵に仕上がる文章で書きあげる所で、ああ、いい小説家だなあと思う。 どう...
体制・逃亡者・村人、二十世紀的なモチーフの中に生きる”私たち”「狼たちの月」「密やかな結晶」フリオ・リャマサ―レス、小川洋子
スペイン内戦は1936年7月から1936年4月の間に、スペイン第二共和国政府に対して将軍が率いた陸軍によるクーデターから始まったスペイン国内の抗争。反乱軍の勝利に終わり、独裁政権の樹立へと繋がる。そうした大きな歴史の流れの中に見えなくなって...

書いてないけど・読んだことがある作家チーム

絲山秋子:『沖で待つ』
既読『袋小路の男』

 実は今回の芥川賞企画を絶対にやろうと思ったきっかけは絲山秋子さんをまた読みたい、ということで、直木賞企画の記事を書いているときにその発端がありました。もう1,2作読んだ気がしたのですが、タイトルからだけでは思い出せなかったので、また読みながら思い出していきたい。
 受賞作『沖で待つ』のほかに、『御社のチャラ男』『ニート』は絶対に読みたい、楽しみ。

直木賞はその作家のつまらない作品にあげるものなのか?①歴代受賞作を読んでみよう!『ふがいない僕は空を見た』の窪美澄の場合
2025年上半期の芥川賞、直木賞は該当作品無しとして話題になりました。良い決断と話題性だなと。 普段読書をしない人が、芥川賞受賞作だから読もうかな、この作家が直木賞獲ったなら読もうかな、と受賞を理由に読んでみて、何だつまらないし芥川賞作家・...

津村喜久子:『ポトスライムの舟』
既読『君は永遠にそいつらより若い』『ワーカー・ダイジェスト』

 近年の出世頭ではないかなと。芥川賞作家なのに、今年中間小説並に読まれた印象。活躍の範囲は素晴らしい、あとは作風や質が気になるところ。
 もともとお仕事小説とか、結構中間的な活躍をされていくのかなと『ワーカー・ダイジェスト』を読んだとき(揚げナスカレーがおいしそうなイメージしか覚えていませんが)や『この世にたやすい仕事はない』『アレグリアとは仕事はできない』のタイトルを見たときに思って、現代的な感覚で書いてくれそうだが今はまだ届かないんだよなあと思っていたら、そのまま私が冬眠して、急に聞いたのが『水車小屋のネネ』ですからね、広く読まれましたよね。
 受賞作とネネは読みたいと思ってます。
 装丁が可愛く、読書モチーフらしい『サキの忘れ物』も読みたいかも、芥川賞とか純文学の狭さや硬さに捕らわれずに自分らしいのびのびまで書き方を広げられている感じが好感触。

川上未映子:『乳と卵』
既読『わたくし率 イン歯-、または世界』『ヘヴン』

 こちらも結構目玉級、近年の芥川賞受賞の若くて綺麗な受賞作家の成功例の第一候補ではないかと。その後もきちんと活躍してるのが高得点、『黄色い家』にはびっくりですよね、代表作みたいなイメージがありますが、界隈だとどうなのでしょう。既読二作、悪い印象はなかったですが、まあ別に私が特化して読みたい感じもしなくて放置、『黄色い家』のうわさを聞いて文庫落ちしたら読みたいなと思ってだいぶたちます。『黄色い家』とタイトル勝ちな『すべて真夜中の恋人たち』は読みたいですかね。
 こちらも15年以上前の受賞年か、びっくりです。

青山七恵:『ひとり日和』
既読『ひとり日和』『めぐり糸』『みがわり』

 両極端な気持ちで楽しみにしているのが青山七恵さん。
 受賞作は既読、『快楽』の新聞書評で見かけて、これは脱皮したのかもしれないと気になっていた時に新刊『めぐり糸』を図書館で借りることが出来て面白かったので、印象は高止まりだったのに、冬眠を挟んでブログ開設してから楽しみに読んだ『みがわり』が意味が分からな過ぎて(シーフードパスタは美味しそうでした)、距離を置いてしまった。
 受賞作再読はしたくないけどどうしようかな、『快楽』と最新作くらいは読もうかな。

多和田洋子:『犬婿入り』
既読『雪の練習生』

 こちらも15年以上前チーム、受賞が1992年なので30年以上前か。
 良い印象があったのでブログ開設後読もうとして、面白そうなタイトルを拾って借りたのですが、プライベートでいろいろ重なって読書が出来ない時期で図書館に返却してそのまま。小川洋子、村上春樹並みに各国で翻訳出版されてるとのうわさはちらほら。
 代表作で言うと『球形時間』(2002年)『容疑者の夜行列車』(2002年)『雪の練習生』(2011年)『雲をつかむ話』(2012年)『献灯使』(2014年)などと色々並んでいるので、物色して読みたい。
 タイトルだけで言うと『百年の散歩』(2017年)『地球にちりばめられて』(2018)『星に仄めかされて』(2020年)のあたり素敵ですが、難解なイメージが加速するだけに、どうせ一筋縄ではいかないのでしょうね。楽しみ。


金腹ひとみ:『蛇にピアス』
綿矢りさ:『蹴りたい背中』

 芥川賞の一大事件、19歳の美少女が受賞!しかも同時受賞のもの20歳で金原瑞人さんの娘さんらしい!(レイチェルシリーズと『チョコレートアンダーグラウンド』とバーティミアスシリーズ好きでした)と騒ぎになったのも20年近く前なのか、年取ってるはずだ……今綿矢りささん41歳らしいびっくり。
 受賞後も両名とも著作数は重ねているらしいですが、綿矢さんはデビュー作近辺が一番名前を聞きましたね、金原ひとみさんは『ナチュラルボーンチキン』(2024年)『マザーアウトロウ』(2025年)とかで読書垢とかでもここ最近見るので、近年の活躍だと金原さんに軍配なのか? ここ2人は同時受賞で騒がれたし年齢も近いから比較されたり、色々ドラマチックで良いですよね。虚構性抜群。受賞作、その後、近年、都度ピックアップして読んでみたいけど、そこまで興味が続くといいけど。それにしても平成の文学賞大事件は間違いなくこれだろうし、特にその後の芥川賞の受賞傾向のブームを作った一つの文化誕生なので、その点も注目。

柴崎友香:『春の庭』
既読『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』 

 2014年受賞、当時40歳とは、全然取れなかったんだな、意外。面白かった記憶はあるけど地味な印象で、進んで読んではいなかったけど、結構有名なのかと思っていました。
 今回思い出した名前だけど、読むの楽しみ。受賞後もしっかりたくさん書いておられますね。
 『フルタイムライフ』名前と装丁だけでもう読みたい、新入社員の10か月描く長編だろうです、フルタイム卒した人間からすると、これから週五日労働を始める、進む先の荒波などの力強さ、徒労、いろいろ思ってしまう。そういう気持ちに寄り添う文芸、素敵です。

中村文則:『土の中の子供』
既読『何もかも憂鬱な夜に』『悪と仮面のルール』(たぶん)

 男性作家も読んでいきたいとか抜かしたくせに、ここまで12人女性作家のみ……
 2005年に27歳でとってて、若いですね。純文学っぽいイメージの男性作家ってこの人だなってくらい、何か暗い話好きなんだろうなという感じのイメージ。『去年の冬、君と別れ』なんかは読書垢でたまに見るかなあという感じ。受賞歴華々しいですが、代表作は『掏摸』(2009年)『教団X』(2014年)『列』(2023年)辺りなのかなあ。
 ネガティブな内省の男性がまず好きじゃないんだよなあ……鬱々暗いみたいなじめじめしんどい、読めるかなあ、笑いながら死んでいくみたいな感じの方がむしろ色気を感じるお年頃。
 

円城塔:『道化師の蝶』
既読(上記:受賞作)『屍者の帝国』『これはペンです』

 男性作家二人目。伊藤計劃方向から知ったあたりで芥川賞受賞したから、候補作止まりと受賞作とは読んだのだった気がするが、全く覚えていない。あんまり好きじゃないなと思った気がする。再読できるかなあ。理系で頭良い人みたいだったから、文芸には早々に飽きて書かなくなるのかなとイメージしていたけど、10冊くらいは出しているのかな、多いのか少ないのかはよくわからず。

<新規・読みたい>

小山田浩子:『穴』

 受賞作の『穴』と『工場』はたまに読書垢でも見るし、ストイックな感じが気になっていました。でもまあなんか狭い感じなのかなあと、ブログ開設後もそこまで読みたい欲はうごかず。やっと読む機会に恵まれたという感じ。どんな感じの世界観なんでしょう?楽しみです。すごい合わない可能性もある。

本谷有希子:『冥土めぐり』

 タイトル凄いなあ、と20歳頃にも気になっていたけど、なんか宗教系な強さを感じて、手が出せずにいましたが、これを機会に読めたら嬉しい。
『一人の哀しみは世界の終わりに匹敵する』(2003)『白バラ四姉妹殺人事件』(2004)『六〇〇〇度の愛』(2005)『選ばれし壊れ屋たち』(2016)、ほら、個性強めででしょう? はまるといいな。

高瀬隼子『おいしいごはんが食べられますように』

 この方、芥川賞作家だと知らず、しかも受賞作、snsでもよく見て一覧で名前見つけて驚いています。なんか話題性があったのかな? 2022年受賞でまだ最近ですね。

とりあえずこんなものか。

 2020年以降は、著者名聞いたことも見たこともない方ばかりで、私がいかにそっち方向の見聞や知見が不足しているのかを痛感しますので、5年分くらいまとめて全部読んでアンソロジー・ダービーならぬ、近年芥川賞ダービーでもやろうかしら。

 20年くらい遡ると一般的に活躍されている作家さんが続出した芥川賞、すでに直木賞とのその関連や比較による相対評価が浮かび上がるので安心しました。
 グローバル現代において、各国の文芸文学状況はどのようなものなのか? 芥川賞・直木賞を読むことで日本文学の真価と現状を掴むことは出来るのか?
 それは世界文学旅行を楽しむ場合にも、まずは足場を把握して温故知新、彼を知り己を知れば百戦殆からず、相対的に大事なことなのかもなとここまで書いてから思うところもあります。
 古臭く感じる芥川賞、現代的ではない小説趣味、それにしても今ここから少しずつ新しく、さらに楽しむ方法はあるのではないかなと。その文化をぜひこの読書、1冊や1人との出会いで、私の読書、あなたの読書、生活や人生や価値観に響いていきますように。

直木賞はその作家のつまらない作品にあげるものなのか?①歴代受賞作を読んでみよう!『ふがいない僕は空を見た』の窪美澄の場合
2025年上半期の芥川賞、直木賞は該当作品無しとして話題になりました。良い決断と話題性だなと。 普段読書をしない人が、芥川賞受賞作だから読もうかな、この作家が直木賞獲ったなら読もうかな、と受賞を理由に読んでみて、何だつまらないし芥川賞作家・...
文学的迷子たちへ
文章を読みたいし、できればそれは夢のようなフィクションだと素敵だ。 一人でも多くの文学的迷子が減り、一冊でも多くの本が読まれ、何より私がその孤独から救われますように。

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