G-40MCWJEVZR 【映画】あらゆるバランスと希望の明るさが抜群「コーダ あいのうた」95点 - おひさまの図書館
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【映画】あらゆるバランスと希望の明るさが抜群「コーダ あいのうた」95点

【映画倉庫】


「コーダ あいのうた」(CODA)(2021)
 割と完璧な作品だったと思う。
 本ブログの評価点で、現時点で一番高いのは「ブラック・スワン」の95点。
 基本的にこういう評価点は、序盤に高得点を出してしまうと後半は得点の付け方に苦心するし、
 特に私のようなこれまでの映画鑑賞経験の蓄積があまりない人間が、その時点の審美感覚で高得点をつけてしまえば、さらに長いブログ生活を考えると得はないのだが、それでも「ブラック・スワン」に関してはケチの付け方が結構なくて、あえて言うなら、暗い色調とホラー展開が合わない人はいるだろうし(これは完全に好みの問題で完成度とは関係がないし商業性としても同様)、社会的なテーマを扱っていない点、とても狭い範囲の美意識や精神や業界の話であること、しかしそれも創作的な狭さに研ぎ澄ましていく作為性が素晴らしく、やはり未だに何か微妙な点があるかと言われたら難しい、なんとなくのあと五点でしかない、そして本作も同様だ。

 聴覚障害者の両親をもつ子供(コーダ)である女子高生のルビー(エミリア・ジョーンズ)は、父と兄の仕事を手伝うため毎朝3時に起きて漁船に乗っている。三人で仕事をしている間もルビーは常に歌を口ずさんでおり、広い海の中、生臭い船上での作業中、彼女は自分にしか聞こえない伸びやかな歌声を響かせているが、そのことを誰も知らない。
 家族の中で唯一耳が聞こえるルビーは、幼い頃から通訳の役割などを果たしながら尽くしてきた。朝から働き、授業中に居眠りしてしまうことや、その仕事内容や家族のことでクラスメイトに揶揄され、家に帰ればセックスなどの欲求に直接的で寛容な家族の中で、夕食時に兄は出会い系サイトの話を両親と楽しむのに、自分が音楽をプレイヤーで聴くことも注意される。「音楽はだめで、出会い系はいいの?」と言い返すルビーに対し母親も「みんなで楽しめるでしょ、音楽と違って」と話し、校内と家庭内、健常者の中でも聾者の中でも孤独であることが提示される。

 そんな孤独の中で生きるルビーにとって、救世主のように現れる音楽教師がまず良い。
「これは堅苦しい歌じゃない、ラブソングなんだぞ すべてを棄てて誰かを愛する心地を歌える」
「まだ不安定だが、魅力的な歌声だ。卒業後は?奨学金がある」
「プッシュプッシュプッシュ!!」
「娘さんは才能があると伝えてくれ、大学に行かせないのは大きな過ちだ」
 音楽への情熱、教師として生徒への愛情、音楽への愛情、才能への愛情、多く語られはしないが幼い女の子を育てている描写、けれどパートナーは映されず、キューバから出てきたという発言などのバックボーンを含め非常に情感に溢れた教師役を演じたエウヘニオ・デルベスはアカデミー賞助演男優賞を受賞している。ほかにも作品賞や脚色賞でもノミネートされ、全てで受賞しているそうだ。

 ルビーは思いを寄せる男子が何クラブに入るのかを気にしながら、彼が合唱クラブに入ったので自分も入ったような雰囲気があり、初回のクラブ活動で個性的な教師により「ハッピーバースデイ」をみなの前で一人一人独唱させられるのだが、主人公は何度つつかれても歌えない。一人になってからとてものびやかに力強く聞かせてくれる。その物悲しさと情感の深さに、健常者として障害者家族の中に唯一生まれた自分の誕生について懐疑的であり、家族の中での孤独感と他者世界の中での孤独感を抱えているために「ハッピーバースデイ」を歌えない明らかな孤独、自分の人生への非祝福の表現が素晴らしい、と感嘆したのだが、後日教師に理由を問われたルビーの答えにより、以前話し方が変だとからかわれたため人前で歌うのが恥ずかしい、コーダ=聾者の家の子、という克服テーマが提示されます。
 それでなら好きな男の子が入ったからって気軽に合唱クラブに入るなよ、躊躇しろよという気持ちや、絶対に孤独の表現場所だったのにその散らし方は勿体ないよ、とここで若干肩透かしを食らったことが個人的には残念な気持ちがしてしまったし、主人公が相手役の男の子に最初から好意を寄せていた理由が、あとからすれば家柄や自分との違いへの憧れと分かるものの、ワンシーンやワンクッションが先にあっても良かったし、若干ではあるが友人が兄と関係を持つ部分は今後主人公の代わりに家族に使われそうな気配は良くないが、本作のバランス感覚とその登場人物たちであれば、そこも良い塩梅で、幼い主人公に味合わせた苦労を新しく義理の娘(になりそうな子)にはむしろさせないかなと思わせるほどには、きちんと明るく締めてある、つまりほとんど完璧と言っていい。

 聾者の家族の中で唯一健常者に生まれた娘は、家族の為に一生尽くさねばならないのか。
 これは非常に重いテーマで、家族に頼られる重さ、家族だから責任を持って面倒を見ろという視線、利かない自由に虐げられる苦しみもわかるし、いわれなき偏見やティーンであれば当然双方で気になるであろう非健常のモチーフは目立つし、嫌悪や恥じらいにも繋がる、けれどもちろん愛しく力になってあげたい家族、けれど彼らのもとに生まれたから経済的自由が無く、将来の自由や金銭的な負担などもそうだ。
 しかし本作はそうした重いテーマを扱いながらも、恩師の音楽教師のエンタメ感やスポ根感も入れつつ、限られた娯楽の中で性的なトピックが強い障害者の要素を自然と扱いながら、その下ネタをけれどユーモアに変えることを忘れない配慮もあり、とても創作的なバランス感覚と目配せが素晴らしい。
 見せ場となる発表会の部分をあえて無音にする勇気とはっきりとした作為、そして二人きりになった夜空の下ではこれでもかと大声で歌わせその喉の震えや肺の膨らみを聴く、虚構創作の追い打ちがすさまじく、そこから一気に転じる親子や展開の明るさは不自然ではないし虚構的にも勢いづく、そして恩師の登場とサポート、手話のモチーフとしての見事な使い方。

 全編の音楽性やエンタメ性はそれほど高くないのだが、大事にしている声や自然な音、それが聞こえないということ、愛情や情熱、困難と苦難、愛おしさや苦しさ、輝かしさ、それを映像として切り取り作品に仕上げた丁寧な姿勢にも非常に好感が持てるし、絵面の強さもしっかりあるし、主演の女の子にも華がある。障害を扱った作品としてのバランスも申し分ないと思う、チャラついてもダメ、暗すぎてもダメ、そのあたりの難しい配分もクリアしている。その上で映画としてこんなにも面白い、これは素晴らしいことだ。
 重いテーマやメッセージを扱えば扱うほど、創作的な手際にはバランス感覚やセンスが問われるし、軽薄な扱い方は許されないと分かりながらも、どれ程の塩梅で作り上げるか、は実力であり出来栄えそのものである、このあたりのことは「存在のない子供たち」でもふれたように、テーマやメッセージ性があればこそどのような虚構創作にするのか、或いは、テーマやメッセージ性があるからこそ虚構創作を選んだ、であるならばどんな達成を目指すのかの価値の話になってくる。私はこれを非常に強く評価したい。
 逆に言えば本作には、スターは登場しないし、エンタメ的な作り上げはしていないし、障害なんて重そうだからそんなのフィクションであえて触れる気ないよ、という方にこそ観てほしい! スターにも派手さにも頼らずに、こんなにも面白い作品って作れるんだ、映画って面白いな、と思える作りになっています。

【映画】テーマと虚構創作への憧れと責任感「存在のない子供たち」95点
(2018) 物凄く深い所にグサッとくる映画。これほどの絶望を私たちは直視したことがない、というところまで落とした下層の現実的で救いがない世界を見せつけてくるテーマ性に対し、最後はきちんと希望を吹かせて印象的に締める、創作性としては抜群。 ...
【映画】鮮烈な悲しみの演技と踊らされた男「ジョーカー」90点
(2019) 監督:トッド・フィリップス 脚本:同上、スコット・シルヴァー 主演:ホアキン・フェニックス 出演:ロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ

「歌を始めた」と母親に話しても「なぜ?反抗期なのね」と言われる、
「私には私の人生がある」それを言えない人生、唯一の健常者の娘は家族を世話して当たり前、それが責任で愛であると。「あなたを頼りにしてるのよ!」「私に押し付けないで!」
 子供はもっと叫んでも良い、私を必要とするのではなく私を愛してほしいと叫んでも良い。私は障害者でも関係なくあなたたちを愛しているけれど、あなたたちは健常者の私を使うばかりで愛してくれはしないのかと問うていい。けれど強い言葉をぶつけ合わなくても、許し合い思い合う行動の中で家族は許し合い結ばれていく。
 できれば、才能がない一般的な娘であったとしても、理解ある障害者の家族によって阻まれず、そしてそれも他者や世間が責任を負わせずに、開かれた未来があるようにと願うばかりだ。

 これも原題の「コーダ」だけでよいのに、謎の副題がついている。
 あいのうた、こんな副題がついた映画が面白いなんて思わなかった、ある意味でここが意外性を生み出している意味では邦題はいい仕事をしたかもしれない。

【映画】肉体と芸術 完成度の最高峰「ブラック・スワン」95点
(2010年)  鍛え抜かれた背中、緊張感と早さのある白と黒のコントラストで本作はスタートするのだが、無駄のない引き締まった完成度と極限で、最初から最後まで完璧だったように思う。  物凄く視野が狭い作品。 ナタリー・ポートマンみたいな宝石を...


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