G-40MCWJEVZR 【批評】彼女の前と後「ココ・アヴァン・シャネル」80点 - おひさまの図書館
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【映画】彼女の前と後の女性たち「ココ・アヴァン・シャネル」80点

【映画倉庫】

(2009)
 本作はあまりにも有名な女性の半生を映画化した1つ。
 彼女がブランドを起こして成功するあたりのサクセスは描かれないので、それを期待して観るとがっかりするか。ただ、彼女が解放する前の女性たちはどのようなステレオタイプだったのか、当時の女性の生活や扱われ方の価値観や慣習、その中で生きた彼女と生き抜いた先までがわかる、価値テーマ的な作品になっていて、私は面白かった。全体的にクラシカルだし、ヨーロッパ映画になっているので明確なエンタメ性ではないためそれを退屈だと思うと合わないかもしれないが、そこに味や趣がある魅力的な映画。

 ファッション映画として服飾の魅力がまずあり、作中では彼女と彼女以外で明確に女性の服装を隔てており、前時代的な周囲の女性の魅力も描きつつも、その機能性やそこに込められた生き方のテーマすらもを否定しながら、主人公のココは自活的な女性の生き方を模索していく。
 女性はコルセットに華やかなドレス、主演は綺麗だし、俳優二人もそれぞれの魅力があった。バルサンとの関係性の豊かな変化に人生の機微があり、ボーイとの真剣な恋には瞬間的な少女性が生まれてよ可愛らしかった。
 時代的にもパトロンを二人も三人も得て世に出るのは正しいやり方。それでしか登れない時代や事情もある、やはり時代を読まないと成功はない。時代を生き抜いた彼女と功績らしい半生の美しい強かさが観られる作品。

 時は1880年代、財産も教育もない孤児院育ちの少女が、裁縫を習いながら父親が迎えに来るのを待っていた。時は流れ、夜はナイトクラブでお粗末な歌手になり、酔った兵士を相手にテーブルを回りチップを求め、昼は仕立て屋で針仕事をした。姉の恋人の男爵が紹介してくれたエティエンヌ・バルサン(ブノワ・ポールヴ―ルド)のもとで退廃的な暮らしを約束されながら、彼のもとに集まる貴族たちに帽子作りを趣味で始めるが、起業はまだまだ先のお話。
 ココは皮肉屋で、女性に求められる服を捨てていき、男性的なスタイルの服を身につけ始める。そんな彼女に「シンプルは賢明だ」と近づく男、ボーイ・カペルに26歳の彼女は生まれて初めての恋に落ちる。だが相手はビジネスで身を立ててきた男、その生涯のためにイギリスの富豪の娘と結婚しなければならない。

 当時のココはバルサンに庇護される立場、自分は孤児院育ち、愛する男に結婚で与えられるものは見事に少ない。ボーイは結婚は社会的なもの、と口にするし、その目は最初から最後まで誠実にココを愛していた。
「父と結婚するために、母にはあるものがなかった。貴族の家柄だよ。だから僕は他人の手で育てられた。そんな顔するなよ、不幸に見えるかい? 生まれが違っていれば、本を読み旅をして学ぶことなどきっとなかった。君には好かれたかもしれないがね」
「私仕事がしたいの」
「女性に向いた仕事はないよ」
「あなたは何のためにビジネスマンになったの?」
「君に好かれるため」
「何様のつもりよ」
 そんな2人の近付きに、次第に嫉妬や執着、悲しみの立場に向かうココへの憐憫から、自身の愛に気づき、決意するバルサン。
「私と結婚しよう、全て解決する、好きなだけ帽子をつくれ、一族は何とかする」
 どちらも退け、誰とも結婚はしないと言うココ。
 ボーイは結婚し、ココが店を出すための資金を出資。パリでココの帽子が売れ始める。
「おもちゃを与えたつもりが、自由を与えたよだ」
「有名人を妻に持てたのにね、古臭いお城のレディじゃなくて。幸せになれた」
「今は違うか?」

 結婚は社会的なもの、持てる者を妻にした方がメリットがある。家柄・資産・功績他、誰と結ぶかでメリットがあるのは現代も変わらない。愛する人に孤児の自分はメリットをあげられないなら彼は彼で結婚すればいい。結婚せずしてバルザンの庇護もボーイからの出資も受けるココは、結婚で得られるメリットも少ない。のちに自分も財産を築き、成功、今なら有名人の夫にしてやれる、このあたりのジレンマは、まさに女性の社会進出の最前線であることを思わせる。
 自分が生きる時代のしきたりを息苦しく感じた彼女は、だからこそ古き良き女性像から女性たちの解放を願う。苦しいコルセット、介助無しに満足に移動出来ない豪華な帽子やドレスの裾、階級や家柄に縛られる婚姻と破綻。

 最後、ショー・ビジネスの雰囲気の虚構性の中で、恐らく歴代の商品を着たモデルたちがガラス張りの階段を下りてくる、時代の遍歴、まさに女性の服装の遍歴を作ってきた仕事の成果を見られる壮観さがある演出。そして最後の走馬灯、人生の悲しみ、けれど成し遂げた仕事を表現し切った、印象的かつ華と悲哀のある抜群の場面。

 美しさは、あなたがあなたらしくいると決めたときに決まる
 かけがえのない人になりたければ、人と違っていなければならない
 ドレスはあなたは、今日一番の敵の所へ向かわせる
 決して変えられないものがある、私は一流をつくりたいの

 諸説あるらしいが、ココ・シャネルの名言には彼女の強さや気高さ、生き抜いて築いてきた自負がある、その生涯で獲得してきた多さを物語る。
 ブランドイメージと功績の一致、歴史の物語に惚れ惚れする。これ以降の成功や歴史はまた違う作品に託される、何度でも映画化される主人公の輝きに満ちた人生、つらくも楽しかった。

 クラシカルな本作と異なり、アメリカ的な快活さと即物的な簡易さで間男や従属的な女性が描かれた「華麗なるギャツビー」を本作よりも後に観て、共に恋愛映画や身分違いの恋について本作を思い出すと、そのクラシカルな魅力が余計に輝きを持つ気がした。こうした虚構性を愛でることが本質的には映像作品である映画の魅力だろうと思う。

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