(2021)監督、脚本、製作、編集:クロエ・ジャオ
主演:フランシス・マクド―マンド
原作:「ノマド:漂流する高齢労働者たち」(2017)ノンフィクション
最初、私はこれを貧困の物語だと思った。
日本では2000年代からネットカフェ難民がはやったが、その国土による文化違いのアメリカ版の貧困と寝床の話だと捉えた。日本の細々しい住宅や営業志向と交通の利便などの事情と、アメリカの国土と交通事情による文化の違いは明白で、経済難により家を失った彼らがどう生きるのかは、閉鎖的と開放的とに日米で対照的なのがお国柄で面白い。
しかし次第に、ノマド(=放流者や遊牧民的)という生き方「同じ場所で生きて死を待つなんて嫌」「この広大な大地や自給自足、自己サイクルの思想」等を口にする彼らの寄り合いに、強がりと同等以上の何かを感じ始める。面倒くさい程に浮世離れした人は存在するし、そう考えついて離れることのできない人生も存在する。ここに、貧困によりやむにやまれぬ車上生活者と、自由や主義による選択により車上生活を行っている者との異なるパターンが見えてくる。
日本に流れてきた基本的なノマドブームの際には、IT環境の変化による主に労働や環境におけるライフワーク的なスタイルとして、縛られるか否かは職場や会社という帰属先(からの自宅や旅先)であったかのように思えたが、本作が使ったアメリカ的なノマドは、居住区から派生する生活拠点や終の住処的なものへの価値観に変換されていく。このコンセプトの捉え方も、国柄や業界、ただ本作品主体の選択の可能性もあるし、全般の判断はつかない。
広大な大地を舞台に行き交い彷徨う物語は、人と人の出会いと別れが印象的な作品だった。
出会いは新しい空気のように簡単に流れ、主人公は車で離れていく相手との別れを何度も経験する。そして誘われる新しい定住先や家族もある。
「一度もさようならを言ったことがないんだ、いつもまたどこかで。って」
主人公は孤独のはずだ、不安もある。タイヤがパンクすることが一大事で、車が壊れたら死活問題。夫を無くしてもそこに住み続けて、そこを出てからは流浪。
家や家庭を持つことや等は責任や覚悟にも近い。
子供の頃は外に飛び出したい、新しく得たい。けれど飛び出してからは、定住も就職も婚姻も家庭も、責任や約束、長く外を流れてからはそこに入ることは躊躇される。
人類はそう継続してきて、それを当り前の感覚で出来る人もいれば、その責任から逃れたい人もいる。一度失ってしまえば二度と持ちたくない人もいて、これが無責任と言われればそうだし、人は変化を嫌うから、自分をまた決めてまで選ぶ理由が難しく、今や選ばないことを正当化させて逃げる方が容易い。けれどそれが間違った価値観とは、他人には判断付かない為に相手の尊重もあり該当させづらく、それぞれの答えと人生があるとしか言えない、判断の正解は無いし、誰も強制できない。
どんな人生にも不安や悲しみがあって、責任と幸福がある。だから自分はどう生きるのか、自分だけはそれをまじめに考え、広くを知って深く考え、強く選ばなければならない。
みんな孤独。放浪するそれは、孤独で責任に住み着かない。けれどそんな人たちの暮らす世界、この世界の全ては別れではない、みんな同じ世界に住んでいる、またどこかで。
そんな世界における貧困や定住は一つのテーマでしかない、まで思えたら思索的だ。
基本的に本作は貧困の系譜を題材にしているような気もするが、私は何を発端にしたにしても続いた人生の物語が彼女をどう洗い、どう弄び、そして彼女が選んできた経過が人生を広げた、と思いたい。それだけの豊かさ本作にはあると私は感じた。
鑑賞後調べてみたところによれば、2008年、米国証券会社の破綻=リーマンショックを発端にした未曾有の経済危機が全世界を襲い、その余波はリタイア世代にも容赦なく降りかかった。高齢者が家を手放すことになり、家を失った彼らは自家用車で寝泊まりし、働き口を求めて全米各地を動き回る。資格や経験の有無も問われず、安い単価で肉体労働に従事する日雇い労働者さながらの労働環境。そんな環境の中でも働くしかない生きていく人々。
やはり本作は貧困の渦中の話だったが、そうした時代設定やモチーフを扱いながら、社会派の硬さや暗さに終わらない広がりや奥行きがあるところに、人間であることの暖かさと映画作品であることを忘れない本作の面白みを感じた。
第93回アカデミー賞では計6部門にノミネート(作品賞、監督賞、マクドーマンドの主演女優賞を受賞。ジャオは有色人種の女性として初めて監督賞を受賞し、マクドーマンドは同一作品で製作者と出演者の両方としてアカデミー賞を受賞した史上初)
これだけ聞くと物凄く華々しく感じるが、本作のトーンはひたすら落ち着いている。様々な観点から見られる作品です。彼らが生活する上での不自由や孤独、吹き付ける冬の寒さなんかはやはりとても厳しいものがあるのだけれど、どこか温かみを感じさせる人とのかかわりや主人公の面持ちや心持が柔らかいから、それをどちらに取るかで評価は変わるかもしれない。
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