G-40MCWJEVZR 【批評】ラストシーンの為に観る二時間「オットーという男」80点 - おひさまの図書館 あらすじ・ネタバレ・つまらない?
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【映画】ラストシーンの為に観る二時間、トム・ハンクスが染みる「オットーという男」80点

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A Man Called Otto(2022)
「あなたは世界一のパパになる」
 朝起きて隣に寝ている妻を探す手、それは幸せを探す手。
 何をしても許してくれる、何をしてでも守りたくなる、そんな相手を得るということ、それを失うということ。言葉で語らないオットーの代わりに、画面に語らせる動作や記憶の情景は、あまりにも多くの愛しさと寂しさを滲ませ、語らない老人に寂しくまとわせていく孤独と、かつての愛しさが深い。

 観始めて少し経つまで、主人公を演じるのがトム・ハンクスだと気づくまで時間がかかる。不機嫌そうな顔、偏屈で、ホームセンターのアルバイト従業員を困らせるような難癖や屁理屈を繰り返す姿は、およそトム・ハンクスらしいような明るさや明るさではない。
 作りがシンプルで情感は抑え目、特別なことは起こらないが、主役と主題の静かな魅力が引っ張り特別な気持ちをくれる作品。そしてそんな静かな主人公の日常に突如現れる騒がしさがやがて新しい愛しさに変わる展開を描いたヒューマンドラマ。やはりそういう作品をやらせたらトム・ハンクスの魅力は凄い、何とも言えない味わいはエンタメではないが確かに映画の魅力を教えてくれる。
 本作はハリウッドによるリメイク作品で、原作は小説でスウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」(2015)。監督は「プーと大人になった僕」(2018)のマーク・フォースター。

 ペンシルベニア州に住むオットー・アンダーソン(トム・ハンクス)は近所でも有名な偏屈爺さん。ホームセンターでロープの売り方がフィートかヤードかにこだわりを見せてレジで渋滞を起こし、帰宅後何を準備中かと思いきやフックを天井に打ち込み、輪を作ったロープをつるし、その中に頭を入れる。何の悲壮感もなく、計画の延長線上にあった首吊り自殺を淡々と実行しようしていたらが、何やら外が騒がしく、駐車できずに騒いでいる夫婦に邪魔されて断念。オットーの悲壮感と静かな毎日に、妻マリソルと夫トミー、そして二人の娘の四人家族が向かいの家に越してきた。マリソルはオットーの生活に頻繁に顔を出して、駐車や工具を貸してくれたお礼にと得意のメキシコ料理や手作りクッキーをくれたり、陽気で人との距離が近く、お隣さんのオットーとも当たり前のように親しくしようとする。

 半年前に亡くした妻ソーニャの後追い自殺する気満々のオットーは、すでにガスや電気や電話の解約を済ませており、隣人たちが家屋に足を踏み入れて電気や暖房が使えないことに触れても、その真意をそれとなく隠す。けれども毎日の睡眠の際に、オットーは薄れる意識やまどろみの中で常に在りし日の妻を思い浮かべ、鑑賞者には徐々に彼の半生が浮かび上がる。妻への愛しさ、失ってしまった家族、今とは異なるかつての彼、そして現在の彼。
 オットーは何度かいくつかの方法で自殺を試みるのだが、そのたびにマリソルが騒ぎながらやってきては中断される。マリソルの車の運転の教官になってほしいだとか、第三子が生まれる前に夫婦で最後の食事がしたいから娘二人を見ていてほしいとか、マリソルの助手席に乗せられ教官を務めさせられるが動揺して運転がままならないマリソルの車に後方車がクラクションを浴びせかけると、飛び出していってマリソルを悪く言う相手を怒鳴り、彼女を庇い、運転への勇気を励ます。
 偏屈で面倒者のような前評判とは異なる、熱く思いやりに溢れた人間性を見せるオットー。
 首吊りが成功した場合に汚れを抑えるために敷いた新聞広告に見つけたセールの花束を買って、ソーニャのお墓に備えながら持ってきた椅子に座り語りかける時間も大切にしているし、マリソルの2人の娘に絵本をせがまれれば抑揚をつけて読んであげたりと、オットーの人間性の豊かさはすぐにわかる。
本作のモチーフとしているような近所で有名な偏屈爺さんは、本来もっと癖が強いはずだが、そこはトム・ハンクス、嫌味や不快感は弱く、例えばこれを日本版でリメイクしたらもっと嫌な人物造形が当てられるのかなと思うし、そこのギャップを無意味に描こうとして酌を割いて、結果上手く描けないはず、けれどトム・ハンクスは抑えた演技と脚本の中でも自然と見せてしまい、それが愛おしくも好ましい不思議があり、この作品はそうした俳優の魅力に溢れている。
 しかし彼の出演作らしいハートウォーミングな作品群に沿うが、甘々になり過ぎないのは本作の深い悲しみが理由になる。
 
 正直、途中、中弛みを感じる。
 隣の家の夫婦は家族ぐるみの付き合いだったが今は中断された理由や、どうでもいいご近所付き合いが徐々に顔ぶれを増やして展開していくのが理由だ。けれども現実にはそうした関わりにより生まれる責任感や助け合いの場面になりえる近所付き合いや、そこにある人と人との繋がりの煩わしさに生まれる愛しさを描く。特に1番うるさく陽気なマリソルは、ことあるごとにオットーに図々しいのだが、ギブ&テイクも心得ているし、言動の節々に純粋な可愛らしさが浮かび、人と人との交流の温かさや助け合いの側面も感じさせるその態度にオットーも次第に好感を抱く説得力には十分だ。
 いつしかオットーは彼女にはぽつぽつと過去を語る。ゆえに、二人だけが知るオットーの過去と気持ちを知った上で、彼が家屋の二階に放置していたゆりかごを彼女の生まれてきた息子にあげるシーンは非常に温かい。

 深い悲しみと、始まっていく未来の陸続きには、なんでもない毎日しかない。
 しかし、その毎日に包まれて暮らした道のりの最後があっけなく訪れても、残された者は非常に悲しい。親愛な贈り物と言葉と気持ちを他者に残し、やっと並んで一緒になれたのかと思えば幸せにも思える。子供たちの人形と花と気持ち、そしてイラスト。なんてダメ押し、最後までゆっくりしっかり押していき、完全なラスト。
 目立った出来事は起こらない。しかしここまで深い悲しみと愛しさを作り出し、胸を掴んで離さない映画を作ってしまう、素晴らしいことだ。
 静かな幸せ、静かな悲しみ、人生の終わり、そんな出来事からの始まり。

 人生を変えてくれるような愛しい人との出会いに恵まれても、それはいつしか別れや悲しみになりもするこの生涯は、得ては失っての繰り返しで進むが、それでも毎日の生活には愛しさの可能性に溢れ、新たな出会いはそれらを再度増やし、そして自分もまた彼らの人生に愛しさと悲しみの別れと出会いを植え付ける。そうして繰り返される人生と命の交流や遭遇について考え、そこに何を感じるかが本作の魅力とテーマになるだろう。
 語り過ぎない、プロット展開や画面作りに派手さはない。けれども一人の男性が生きて湧いた感情と、彼が周囲に与えて残していくもの、それを誠実に描いた脚本と演じた男の静かな価値がそこにある。男の寂しい人生を、幸福や陽気で彩り温めてくれた女性との出会いと別れに、それぞれの意味と価値を持たせた、人生や映画、愛しい誰かへの気持ちが静かに詰まった作品。
 思い出す相手がいるかどうか、煩わしい交流に愛を見出せるかどうかで本作への評価は変わるかもしれないが、そうした冷めた視点を持つオットーを温めたように、静かにゆっくりと鑑賞者の気持ちも温めてくれる二時間。
 不機嫌そうな男が佇立しているだけのパッケージに目を引くところはないが、そうした不器用な男性の生き方、己の幸福と悲しみの表現の下手さ、アピールの下手さがすでに愛おしい。

主演トム・ハンクスの映画『ターミナル』、原作者の他の小説も読んでみました『おばあちゃんのごめんねリスト』

【映画】空港に閉じ込められた男の9か月「ターミナル」65点
監督:スティーブン・スピルバーグ 主演:トム・ハンクス 出演:キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、スタンリー・トゥッチ他

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