邦画の実写でここまでのドル箱を作り上げた、素晴らしいことだと思う。原作は長編であるから、あと何作もシリーズを作れると分かってからの豪華な俳優陣の投入はすさまじいし、約束された成功に資金と人を投入して一挙集中できる物作りの魅力が詰まっている。どんどんやって欲しい。
私は原作漫画は未読、アニメ版は途中シーズンまで見ていて、しかし数年前なので多くの記憶は朧気であるから、映画から入った視聴者とほとんど変わらない感覚で観られる。ナンバリングはされていないが、「無印」「遥かな大地」「運命の炎」そして最新作「大将軍の帰還」まで、現在四作品が上映済み。(若干ケチをつければこの副題は基本的にダサい)
とにかく三弾目から上昇気流、後半40分を残してからは一気で、遠くから眺める王騎もだが、熱血過ぎて現実味がわかない戦真っただ中でもコミカルを忘れないために配置された岡山天音演じる尾平が良くて、その周辺で緩急をつけて勢いつけるさまも見事なチームワークだし、とにかく面白かった。少年漫画チックな羌瘣の能力は戦場で華があるし、あれくらいの副長がいないと誰も信についてはいけないので、逆に主人公の魅力を引き立てるポジションとしての羌瘣は要の魅力がある。そして皆が作戦や死力を尽くして押し上げた隊長が敵将を打ち取ったと流れる辺りの盛り上がりは普遍的に打ち震える要素がある。そしてその最高潮では締めずに、第四作へ流れていくエピローグも悪くない。
アニメはこのあたりからが面白かった気がするので、つまり原作と脚本はこれ以降絶対に面白い、あとは映画製作チームが下手を打たなければ本作の成功は決まったも同然、あとはいかに継続できるかの話になってくる。
6月から映画を観始めて、邦画作品も実は何作か観てはいるものの、記事にしたのは小松菜奈と大泉洋の「恋は雨上がりのように」のみであることからも分かるように、個人的に合わず、評価出来るものは少なかった。別にすごいひどいってわけでもない、でも特に書くことがない、2時間使ってその異常自体はもはや現代では犯罪的なつまらない時間と言っていい。制作側もどれほどの時間と資金と労力を使ってこれなの、むなしくならないのかなと、思ってしまったりもする。
幼少期から考えても、ジブリやドラえもんなどのアニメーション作品から面白く何度も観たが、邦画の実写は、例えば「踊る大捜査線シリーズ」などのテレビドラマ→劇場版ランクアップ等の成功例(テレビ朝日のトリックなどもありますね)が映画でも賑わせた時代もありましたが、最近はほんとに不作。
2008年の「おくりびと」のように海外で受賞に絡んだりすれば話題になるし、2016年の「シン・ゴジラ」のように過去の知名度を使ってのリバイバル感のある作品も排出してはいるものの、基本的には映画を作る力や意気込みは感幅ないし、商業としてのやる気や野心もなさそうに見える。現在はNetflixの「地面師」が話題ですが、配信展開にリスクのないコンパクトからの波及効果は娯楽のテレビから動画への確変のようにも思えるし、確かに映画上映はリスクのある起業のようにも思えるので難易度はわかるし、もはや現代性があるコンテンツかは疑問すらある。
ある時期からよく揶揄に使われていた「また漫画原作か」と言われる系譜、どうせとんでもない実写化になるんだろ、山﨑賢人?数字取れない、などの前評判で迎えられた1作からの成功を皮切りに覆しつくした本作は強い。
古くは「エヴァ」、最近でいえば「鬼滅の刃」、そして今更感のある「スラムダンク」、日本の漫画やアニメの文化の強さは今も変わらず、その劇場版のヒットはどの時代も継続し、おそらく邦画の興行収入ランキングで調べれば、その半数上がアニメーション作品に埋め尽くされ、実写作品は少ないのではないかと予想する。ジブリ作品を除いたとしても、それは揺るがないのではないか。
ヒット漫画のアニメ化は鉄板、劇場版アニメもある程度以上に好成績、だろうけれど実写映画化となると途端に勝手が変わってしまう。そういう悲しい作品を私たちはいくつも知っているはずだ。
そして今作も原作は少年漫画、中国の歴史モチーフを採った漫画で既刊は72巻、発行部数は2023年の11月度の一億突破以外は拾えなかったが、今年は更に売れているだろうし、一緒に見つけたワンピース5億冊にもびっくりするし、漫画はその買い集める魅力からうまく場所を取らない電子書籍のメリットに移管できているのだろうなということにも考えが及ぶ。映画も動画サブスクも、漫画も電子書籍も、多くのジャンルで現代的な形式にジャンアップしていることを感じる。
その中で、日本がいつも変わらずに世界的に輸出できる文化ジャンルとしての漫画やアニメーションは揺るぎないし、国もずっとそれを推したい気持ちをチラつかせているにも関わらず、長らくその原作のスケールアップ商業としての実写映画は失敗続きで黒歴史へのアップデートみたいな側面があったが、本作の成功、そしてその前身としては佐藤健の「るろうに剣心」が布石になったように思う。
発行部数で本原作を大きく突き放している「進撃の巨人」も実写版は不発、「ジョジョの奇妙な冒険」も「ゴールデンカムイ」も山﨑賢人頼り、それらの数字がどうなったのかはわからないが、国内で推せる産業としての少年漫画をさらに強めて一般的な分かり易さで大衆にばらまけるプロパガンダである実写映画でもヒットさせることが出来た、出来る、ということの現実的な価値の大きさは凄まじい。
すこし脱線して、なぜ私がこのシリーズを観るに至ったのかは、先月実家に帰り闘病中の母親との会話にありました。4作目「大将軍の帰還」上映記念に3週連続でシリーズ作品を金曜ロードショーでTV放送されたらしく、母親がそれを楽しんだため、映画館に行って最新作も鑑賞、楽しかったから記念で主演の子のファイルと栞を買ったんだ、あなたも観た? と母親に言われたことがきっかけでした。
自分の生死に関わる入院前に、映画を楽しんで、楽しかった、主役の子頑張ってた、だからグッズ買った、と楽しそうに言う母。その話を姉にすると「わかる、うちの娘と息子も、あの動画何回も見てる、人を倒したり話も難しいのに、子供も楽しめるってすごいよね」そして実家にいる間に1.2.3と一気見しました。
確かにテレビはもう現代的な生活の中心にはないかも知れない、私の家にもテレビはありません、でも母親のような老人(推定65歳以上)からしたらスイッチをつけたら受動的に放送してくれるシステムはありがたいし、動画サブスクなんて加入する知識も考えもない老人からすれば、映画公開前に3作続けて放送してくれるわかりやすさは非常にありがたいし、収益率が高そうだし実用的ではない商業グッズだって思い出の大事な記念で、応援になるわけです。シルバーデーのようにお年寄りの金額を下げてくれるのもとてもありがたいからと、近所にある映画館によく足を運んでいるため、私より最新の映画事情に詳しかったし、それをとても楽しんでいるという話を今回初めて聞きました。全てありがたいことだし、母に楽しみを作って下さってありがとうの気持ちを非常に強く持ちました。山﨑賢人はもう私の中でも孫みたいな存在になりました。
消費者に分かり易く届く、それはテレビや映画や大手の価値だし意義です。ならば横綱は横綱相撲らしく、安定感のある仕事や活躍をすべきなのです、本来。二千円払った人を二時間拘束して、つまらないものを見せてる場合ではない、楽しみにチケットを買って足を運ぶ人の信頼を裏切り続けるのは誰なのか。有名な原作と俳優を使って、その担保があるからこそ作り上げることの価値にお金が集まる、それを活かせない製作チームや商業とはなんだったのか。
本作の素晴らしさのまず第一は、優れた長編原作漫画を映画作品に移す際の編集の質にある。
第一作目は、信と嬴政(えいせい)の出会いから、いくつかの門を持った構造の攻略戦を、いかに仲間を集めて行い、嬴政を玉座に上げるのか、そして信の産声。それを原作よりも分かおり易く王騎の魅力でくるむ「手の上で転がされていた」で総集してしまう創作的な工夫が素晴らしい。
第二弾は、初めての野戦、今後始まっていく戦の様が少しずつ分かり始め、特に豊川悦治の麃公(ひょうこう)将軍の劇画タッチも素晴らしいし、第一弾で城攻めの分かり易いエンタメの後に、野戦で主人公の初陣を描く広々とした快活が始まるところの開ける明るさが良いし、大群の戦と将軍個人のメインのバランスも、少年漫画としては均等がとれているので超能力過ぎずに全年齢が楽しめる。
第三弾目、原作では恐らく多少冗長な描かれ方をした嬴政の年少期からの脱却と、王騎の元で多少鍛えてもらえる信の修行パートを、大胆に縮小して流す映画編集の効果が素晴らしく、その後、本域となる軍議を経て大戦への序章が始まる流れも二時間映画としてよく出来ている。
本作のメインテーマとしては、夢という少年漫画らしい設定がしてあるが、映画では特にそれが顕著に表現されていることも悪くない。第一弾は、主人公・信と嬴政に瓜二つとして生まれたからこそ本作の波乱を産んだ漂(ひょう)、二人の幼馴染の夢から始まり、そして嬴政や山の民の悲願など多くを巻き込んでいくが、この夢という表現は歴史題材にあって普遍的な野心と信念であり、現代にも通じる使いやすいものではあるが、それを真っすぐ描いた作品を真顔で出来るのが少年漫画の良い所。
第二弾では、恐らく人気キャラクターであるだろう羌瘣(きょうかい)の夢と、信との出会いにより広がる彼女を含めたのちの他の部下で仲間となる人物たちが多く登場し、一弾目からの成長と、今後の成功を予感させる主人公の魅力が引き立つワンクッションであもある。
第三弾では、そうして出会った部下たちをまとめる百人将になった信が描かれ、さらに今後を予感させる作りと活躍の心地、そして味方や敵将を含めて多くの巨大な敵との出会いに毎回戦慄していく。
本作の成功のもう一つの要素として、主要人物の配役の良さがあった。というよりも、脚本は原作が面白ければほとんど問題がない、そして編集作業が素晴らしいなら、あとは配役と演技だけであり、しかし実写映画が難しいのも多くはここに理由がある。
現代的なイケメン俳優を配置しないと売れる算段が付かない為どうしても限定的な配役になりがちだが、本作の山﨑賢人は、少年時代ですらワイルドで野生的ですらある日本的ではない主人公を悪くなく好演しており、ガラの悪さとは程遠い本人イメージを覆すように及第点以上の荒さを持たせられているし、吉沢亮はイケメンではっきりとした意志の強さと輝かしさ、メインヒロインのような河了貂にボーイッシュな魅力が嫌味ではない橋本環奈は悪くないし、サブヒロインだが主人公と行動を共にするがゆえに活躍の多さからさらに人気が出ちゃうタイプのサブヒロインの羌瘣を演じる清野菜名がはまっている、年齢は全員ずれているので違和感感じず、メインの少年少女たちに何の文句もない。
問題は大人達で、特に王騎の大沢たかおは個人的には受け付けづらいのだが、世間的にはまずまずらしくてそれに驚いた。最重要人物である王騎は作中最強クラスの将軍で主人公の恩師的立場であるにもかかわらず”濃密なおかま”というギャップがまず人物造形として濃すぎるので、演じるのは大変だと思うが、第一弾では全くその雰囲気はものに出来ておらず、第三弾のコミカルさからやっと及第点に達したという感じがするので、見せ場の第四弾までに間に合って本当に良かった。
次に呂不韋、歴史上でも有名かつ本作でも敵の首謀者であるし、佐藤浩市は私も好きな役者であるが、抑えに抑え過ぎた演技から全く凄みを感じなくて期待はずれが凄い。華もない、圧力もない、よく一緒に映っている昌平君の玉木宏の絵力が強いので、そちらばかり見てしまう…‥。
極めつけは李牧演じる小栗旬で、後輩たちが頑張って主演を張ってるヒット作で、よくもまああんな演技をして恥ずかしくないな。一人だけダメな実写映画の典型みたいな軽さと明るさの演技、コレジャナイ軽薄な服装で一人だけ浮いていて正気だろうか。彼並みの完成度で主要人物たちも演じていたなら、本作がどれほど原作や編集に優れていても、過去の失敗実写化とおなじような運命を本作も辿っていたと思う。
少年漫画は基本的に荒唐無稽、初心者や若造の主人公が大活躍していく話に、奇抜な性格や格好のキャッチ―な登場人物たちが登場するわけだから、そうした現実離れした世界観をいかに緊張感と説得力を持って虚構創作できるのかが肝なわけで、役や漫画への敬意や役つくりはもっと然るべき。急ピッチで仕上げた4弾目の大沢たかおの王騎のように、必ず主役を張るレベルの人物だけにそこだけ落とさないか心配になる。
小栗旬は嫌いな俳優ではない、むしろ好き、石原さとみが可愛い「リッチマン・プアウーマン」なんて好きなドラマのトップ10には入る、でも小栗旬から知性や思慮深さなんて一切感じたことはないので、今作は完全に配役ミス、今から玉木に変更すべき… これだけの大作でシリーズだから、主演でなくてもその役を一心に演じられる俳優たちばかりで構成される本作は、重要だけど長い原作の中ではちょい役に過ぎない尺しか活躍しない役も多数存在しているが、例えば1時間のみ登場して退場する役柄を杏が演じているが、その演技の魅力や色気などは全然感じたことはないが、毎回懸命に演じていることは伝わる。(そこはお父さんと真逆)
主演でなくても大作に参加する緊張感が必要で、本作は多くの役者がそのように演じている中で、小栗だけが主要人物であるのに浮いているのは完全に場違い、これは実力以前の問題、そういう映画への姿勢が製作チーム含め邦画のダメなところ。
今どきの若者のはずの山﨑賢人が及第点の信を演じたのに、ベテラン勢が微妙な役つくりと演技をするんだから、過去の映画界の実力や現状がよくわかる作品。しかし本作は現代であり未来へ繋がるものなので、ただただ李牧だけが心配。
少年漫画の生産地としては魅力的だった日本が、映画も輸出できるようになるかどうかは、少し前はジブリでありアニメーション作品だった、それが実写映画でも可能になるかどうか、その文化と商業がかかった作品であるのは間違いないし、日本映画で、漫画実写でも、これだけ作れる、を体現した作品。あとは継続と後続を見たい。
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