(2020)
ハーレイはその天真爛漫な残虐ぶりなどからシリーズ随一の人気キャラで、クリティカルな存在であり、前身の作品である「スーサイド・スクワッド」の出演キャラの中で一番人気だったこともあり一気に単独スピンオフ作品が制作される、という強烈な出世を遂げた。虚構的にこれは素晴らしいことだ。
ということは本作は、最初から興行収入を回収できるだけのヒット作の計算が立っていた、ということになる。そう考えると特に主演以外の配役を含め多少チープだったかなという気もしてきた。ただ絵面的に華があるので予告編などの再編集によるコマとしては強そうな印象になるし、虚構的でアクション的な魅力が強い作品の特徴が強く出ている。結果的にその部分でも主演一人の強力な見せ場で作り上げたファンサービスの面が強いし、彼女を初見の私にもその魅力や惹きがわかるので、純粋な大衆性と興業性の強さがわかる。
アクション映画がまず久しぶりだったが、華があり、見せ方を分かっているなと感じる。
ラストシーンの楽曲が素晴らしくて、可愛い車とペットと二人の息の合った食べ物の伏線の回収もあったりしてまとまりもあり、印象値を一気に上げてくれた。
創作的によくできているし、映像的な見せ場も多く、何より主人公の存在感と魅力のキャッチ―さの粋のような作品。人気キャラのスピンオフ映画だと思えば、この魅力と完成度はまずまずなのではないかなと思うし、アメコミってレベル高いんだな、の一言に尽きる。
ジョーカーと破局したことにより、手を出して報復されることを恐れて我慢していた悪党たちから一斉に狙われるようになったハーレイ・クイン。ゴッサムシティでも大物犯罪者ローマン・シオニスにも目を付けられ捕まってしまうが、彼が欲しがっているあるお宝を持ってくる替わりに自分を見逃すように交渉に成功したハーレイ。そのお宝を手に入れる間に、スリの少女、ゴッサム市の女性警察官、シオニスお気に入りの歌姫、お宝のせいで子供の頃に家族を皆殺しにされた暗殺者の女性、等と出会っては手を組み、シオニス側との死闘を切り抜けていく……
実力者の女ではなくなった主人公は、気づいたら周りの人間に命を狙われてやばい状態だった、というスタートは虚構的にも面白い。
元カレ(Mr.J=プリンちゃん=ジョーカー)からの脱却の中身には精神的な洗脳だとかがあるらしいのだが、本作ではそこまで深くそのあたりは言及されておらず、ハーレイの内側の葛藤なども深くは描かれない。あくまでも恋人との破局として普遍的にまとめられており、元カレとの思い出の場所をどのようにぶっ壊してキレイさっぱり清々するのかという場面はさすがにド派手で笑ってしまう。
ただその一夜を境に、彼女は更に華やかに、自由奔放に吹っ切れていく。
本作は四者四様のアクション的な女性が登場するのだが、主役なので当然だけど、ハーレイはその中でも群を抜いて華があり、メイク、服装、ルックス、戦い方、言動の全てがキャッチ―で素晴らしい。精神科医であったという過去とのギャップが凄く、そのあたりはやはり多くの過去と同様にまだ伺い知れないし想像も追いつかないのだが、職歴や過去の経緯から考えると20代中盤以上かなと思うのだが、自由奔放な言動と服装の楽しさには年齢とのギャップがあり、独特な精神的魅力の表現に繋がっている。
ちなみにハーレイ役のマーゴット・ロビー、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のベイビー、二人目の妻のナオミだというからびっくり。あの作品ではただの美人さんという印象だったが、2013年があれで、2020年にこんな単独主演作品で成り上がるのだから面白い。1990年なので、同じ歳かあとしみじみ。
女性の自由や自立、自力での開放などがテーマになっていると思うのだが、その発端になる主人公ハーレイとジョーカーの関係と経歴を冒頭で手際よくキャッチ―にアニメーションにて説明する魅力があるのだが、本作にて共闘する他3人の女性の人物造形とその説明には雑さがある。
自分の手柄を常に奪う男性上司から離れる警察官、元令嬢だが暗殺者に家族を見殺しにされた復讐のために鍛錬を積んだ暗殺者、本作の敵のボスに「小鳥ちゃん」と可愛がられながらクラブ歌手に甘んじていた歌姫。一人一人の個性と来歴の説明は、巻き戻しや早送りを使いながらコミカルに短縮編集されて工夫はされていると思うのだが、もう少し整理して威力的に行うことも可能だったと思う。
そして、三人の魅力についても説明不足であり、特に歌姫の子はもう少し演出の使用では魅力的に仕上げられた気もするので、せっかく三人集めたがそこまでキャラ設定や演出、魅力的な配役には至っていないので、魅力的な造形で作り上げられているハーレイの引き立て役以上にはなっておらずそこが勿体ないか。
主役のハーレイはそこまで壊れてはいないし、落ち着きは無いし破天荒ではあるが、どちらかというと子供に慕われるような信頼に足る人物の可能性や人間性を描いている点で、壊れ切ったカリスマのジョーカーとは描かれ方が違うのかな、という印象がした。
ハイエナをペットとして飼っていたり、チーズサンドを愉しんだり、警察署に乗り込む時の前面突入ときらびやかな戦い方や武器と言い、キャッチ―なところはあるのだが、噂やまた聞きによって隠されているジョーカーの印象から伺えるだけの存在感と、そんな彼氏のもとで振り回されてぶっ壊れて変貌したハーレイ、というキャラ設定であればもっと壊れることもできたのかなと思ったりもする。しかしそこがひとえに、ジョーカーから解放された彼女本来の、人間らしい魅力だし、経緯がある彼女ならではの今後の楽しみ方への展望になる気もする。
ジョーカーを登場させない構成上の仕組みは賛否があるかもしれないが、個人的には登場しない方が効果的にジョーカーの魅力を増幅して想像できるし、なにより本作はそんな男からの脱却と女子会にあると思うので、特化していてとても良かったと思う。こんなハーレイの元カレ、そしてこんなハーレイを作り上げた元カレはどんな奴だったのか、そしてそれから脱却するハーレイが今後どんな女性になって、どんなストーリーを送るのか。ジョーカーにまつわる過去と、ハーレイにまつわる今後に興味が惹かれる、とてもうまい演出に思う。同時に、故に、付き合う前や別れる時のエピソードも知りたくなる、キャラクター商法やその創作性としては大成功に感じた。そしてその融合から、相反するテーマ性や志向性をもつ作品に細分化されて発展的な趣があるのも個人的に非常に高く評価出来て興味深い。
本作の前日譚となるのが「スーサイド・スクワッド」(2016)、集合キャラ作品らしく、ジョーカー役はホアキン・フェニックスではないし、ハーレイ役は本作と同じマーゴット・ロビーが務めている。その役がハーレイの人気を世界的にしたというのだからすごい、キャラクターも女優も世界的人気に押し上げる分岐点、というのは楽しい。「スーサイド・スクワッド2」もあるそうだ。
本作を観てからだと、狂気のカリスマと呼ばれる男の誕生前夜にて強いメッセージ性を放った「ジョーカー」の二年後を描いた続編「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」のハーレイは別人(レディ・ガガ)か、とも思ってしまうが、作品世界観はパラレルで志向が別物であり、ホアキン・フェニックスの「ジョーカー」のタイトルがテーマ性に振っていて、リンクはしているけれど単独で機能するパラレル世界なのであれば、10月公開の続編はテーマ性の期待できる。ハーレイ・クインやメインタイトルがアクションやエンタメに振っていて、テーマ性はそれほど重要ではなく、パラレルな「ジョーカー」との差別化もされている。
二人がなぜ別れたのかの理由が描かれていないので、本作には明確な克服の主題がなく、ハーレイの極めて内側の特色的な問題となるので、そのあたりが本作でいう所のテーマかなと思う。
恋人の名前や権力で守られて好き勝ってしていた女が、そのガードが無くなっても一人で立って(殺されずに)居られるか、或いは一人でも好き勝手楽しく暮らせるか、という所の自活的パラダイスの存続なのかなと思う。
逆に特殊なカップルの特徴によらずに普遍的なテーマで作り上げられたと思うが、あくまでピンチを元カレに頼らずに華麗に切り抜け、その後も楽しく気ままに暮らす、くらいに留まっている。ただ、トラウマの過去がある人間が明るく楽しく暮らす、ということ自体に脱却が強いので、それだけでも大きな価値の提示であるとも感じる。ここはやはり関連作品や設定との補完により印象が異なる部分か。
自分のものは自分で
何でも手に入れてきた。買ってきたの。でも愛は買えないわよ。
私はやりたいことをやって、言いたいことをいうの。毎日必死にやってるわ。
私はあきれるほどの女の。それで問題はないわ。
激しく抱いてくれる男なんて必要ない。
私はくそったれの女だわ。今度、女友達とここで楽しみたいだけなんだから。
私は最悪な…
お酒なんて買わないわ、もっと稼ぐの。
私の体に障らないで、ハニーなんて呼ばないで、私は描きたいように描くの。
だって私はやりたいようにやるの「woman feat. the dap-kings horns」Kesha
破天荒ではあるものの、精神疾患や過去の犯罪歴や悪行などはあまり感じさせない本作の主人公は、すこし明るく奇想天外な強さとキュートに癒され、元気が出る作品。その吹っ切った過去や、過去の男の魅力と、それに屈している間の彼女はどんなだったのか、非常に興味をそそられるし、このようにしてリミックス展開された世界観に足を踏み入れることになるのか、と思うと上手かった。
作品世界観の中における彼女のテーマ性の全貌はまだ把握し切れてはいないけれど、単独人気キャラとして世に出て、これだけの作品を轟かせ、女優をスターダムに押し上げるあまりの華々しさに、元カレからの脱却という普遍テーマと女性の自立を合わせ、題名に華麗なる覚醒と名付けた、全体的な企画とセンスを感じさせるし、その威力が商業的にも成功を引き付けたのかと思うと、これはもう完全に虚構性の勝利だ。
ただ、女子会の要素は素材がそろっていただけにもう少し強めて楽しそうな感じに振っても良かったのかなという感じがする、大きなその虚構性としては盛り上がってはいないので、まだまだ彼女の発展途上な覚醒期というだけで、もう少し何かものにしてもらいたい気もする。
その人生に大きな影響を与えるほどの強大な男と別れたとしても、別れたからこそ、その後の人生をどう楽しめるのか、これは普遍的な女性のテーマだし、若い世代に打ち出したキャッチ―で破天荒な物語。
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