(2010年)
鍛え抜かれた背中、緊張感と早さのある白と黒のコントラストで本作はスタートするのだが、
無駄のない引き締まった完成度と極限で、最初から最後まで完璧だったように思う。
物凄く視野が狭い作品。
ナタリー・ポートマンみたいな宝石を主演に据えているにも拘らず、全編のほとんどが16mmカメラでの撮影。制作費は1300万ドル。チープで視野の狭い画面が全体を占めていて、本番の舞台場面以外は低予算映画もさながらの画面の暗さが印象的だ。
本作は基本的には主人公のメンタルの作品である。
役の序列で全てが決まる世界に身を置き、技術と精神的圧力は極限を極め、同性同士の嫉妬や世代交代や順位の奪い合いに始まり、母子関係も良好ではない。減量の為にお祝いのケーキを遠慮する娘を脅す母親は「あなたが鼻で笑った私のキャリアは、あなたを産んだから」と言うが、「28歳の妊娠で幼少期からの夢をあきらめたと言われてもママには才能がなかった」と言いたい娘はすべてを背負わされる。
幼少期からの芸事は母子関係が強いし、性的なことを含め温室育ち関連もここにあり、子離れできない母親による狭さ。
主人公のニナは二人暮らしする母親に過剰な愛と期待を背負わされ、一流のバレリーナになることを夢見てレッスンに励んでいる。所属するバレエ団は次の公演『白鳥の湖』に決め、演出家トマ(ヴァンサン・カッセル)が誰をプリマに選ぶのかを団員たちが意識している日々。
純粋で潔白な白鳥と官能的で邪な黒鳥。異なる二役演じる主役なだけに、「白鳥のイメージだけなら君を選ぶ、しかし君は不感症のバレリーナ」とトマに指摘されるのは性的な魅力。
そこは完全な実力と美の世界でありながら、男女と贔屓の世界であり、或いは周囲にそう妬まれる世界であり、これも狭さ。
『白鳥の湖』はバレエ演目の最高峰であるし、白鳥と黒鳥のモチーフに沿う主題性と、その死で最を迎える終演はモチーフを完全にやり切った入れ子式の作品。
「観客の想像を超えるには、まず自分の想像を超えること。それが出来るのは少数だ」
演出家のトマはいかがわしいように見えて、ニナが新たな羽ばたきを見せるごとに目を見開き、その曇りない瞳が印象的な本番時の驚きと感嘆は信頼に足る。
研ぎ澄ましていく肉体と技術、役柄と舞台本番に向けてさらに加速していく自身と不安。
「新たな作品には、新たな女王が必要だ」
早い商品価値のサイクル、肉体の年齢と人気の価値、実力と実績。
配役や代役にからむ順位や嫉妬や足の引っ張り合い、演出家による評価と個人的感情や損得と色恋。性的な魅力と実力、王子が黒鳥を選び白鳥は死を選ぶ、人を引き付ける魅力とは何か、プリマの実力と人気とは何か。
適切で幸福な母子関係とは何か、妊娠と母体、娘の人生は母親の人生のものなのか。
メンタルという不確かさ、幻覚や記憶の改ざん、お酒や薬、恐怖心と猜疑心。
全編に渡る自傷行為は、完璧主義と精神的な圧迫を映すし、どんどん狭くなっていく視野は、研ぎ澄まされるほどに判断がつかなくなっていく。それは客観性の世界ではないから、個人により判断評価され、個人により教育扶養される現実は現実でしかないはずが、何が真実で、何が不完全で理想的で、何が現実なのかわからなくなるほど、主人公は追い詰められていく。
白鳥と黒鳥のモチーフを完全に表現し、
舞台上で完璧に踊り切った白鳥は身を投げる。
彼女の身に起きている現実を他者が目の当たりにして、初めて鑑賞者である私たちは何が現実であったのかを知る。彼女の独白のラストシーン、そしてエンドロールの画面作りには、視野の広さ、開放感、達成感があり、まばゆいばかりだ。
低予算で作られ、R指定により最初は上映館数も少なかったが徐々に拡大していくさまは、作品と完成度が観客を広げて呼び込む興行性を感じる。1300万ドルが3億ドルに化けるんだから、監督と主演の腕と実力の華々しさに他ならない。
こと主演女優によるバレリーナという過酷の極限と心血が感じられる物凄く完成度の高い作品で、映像作品としての効果も脚本も無駄がなく、スリルが加速するたびに視野と心理が狭くなる研ぎ澄ましは必見。
幸せそうな夢物語的なプリマはきっと舞台の世界には存在しない、まずトゥシューズが痛々しいし、絞る肉体も苦しいし、研ぎ澄ます技術と精神が波乱を含み不安を膨らまし猜疑心に満ちる時、孤独は人を苛ます。
とても狭い世界の闇と光、そして達成の開放感の緩急が素晴らしい、無駄のない作品。
prime Video3作目、
めちゃめちゃ面白かったです。
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